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 以前に比べ、札幌などでもデパートを中心に古書展が開催されることが多くなってきました。
 目録を見ても、限定本、郷土資料、古地図などとならんで 「 絵葉書 」 というジャンルがあるのに気づきます。郷土史を扱っている店では、セット ( 袋入り ) はもちろん、" バラ " でも結構いい値段をつけているところがありますが、古書や写真帖などにくらべると、まだまだ手軽に得られるデータソースと言えます。

 最近では新聞社などのデータベースのほか、公共団体でも郷土の写真ライブラリとして整備しているところが増えてきていますが、そのデータを利用する側から見てみると、ほとんど無いに等しい状態で、当時の風俗・文化に触れることのできる貴重な写真であるにもかかわらず、収蔵されたまま、あるいは広く一般に公開されないまま眠っていることが多く、また、こういった 「 絵葉書 」 というものの存在さえ知らない人も多いようです。



 わが国における 「 葉書 」 の歴史は、1873 ( 明治 6 ) 年の官製葉書発行までさかのぼります。
 日本の郵便制度は 1871 ( 明治 4 ) 年 3月に創始されますが、当時は書状のみで、郵便葉書はありませんでした。
 1873 ( 明治 6 ) 年11月19日、太政官布告 第 389 号 で 「 郵便ハガキ紙并封嚢発行規則 」 が公布され、
同年12月 1日、はじめて 「 郵便はがき 」 が発行されました。( 半銭 及び 一銭 )

 さらに、1900 ( 明治33 ) 年 9月 1日、わが国で私製葉書が認められます。( 逓信省令第42号 郵便規則第18条 ) 
 同年10月 1日の郵便規則施行によって、「 絵葉書 」 の製作や使用が可能となり、
さまざまなものが作られるようになります。当時の値段は一枚 2 銭から 10 銭程度だったようです。
 ただ、この時点ではまだ表面 ( 住所・宛名面 ) に通信文を書くことはできませんでした。( 下図参照 )
 ( 使用済みの古い絵葉書などでは裏面の写真や絵の余白に通信文を書いたものが見られます )
 また、最初の官製絵葉書は 1902 ( 明治 35 ) 年 6月18日発売の 「 万国郵便連合加盟 25年記念郵便絵葉書 」 ( 六枚一組 5 銭 ) で、
それ以降、 1906 ( 明治 39 ) 年の日露戦争後まで 「 絵葉書 」 は空前の大ブームとなります。とくに 1904 ( 明治 37 ) 年から発行された日露戦争の戦況を伝えるシリーズものは物凄い人気で、手に入れるための徹夜行列はもちろん、死者までも出たといいます。
さらにヨーロッパで技術が開発され、当時わが国でもようやく普及し始めた 「 コロタイプ印刷 」 ( ガラス乾板を用いたもの ) の効果もあって、「 絵葉書 」 は広く流行することとなりました。
『 新札幌市史 』 ( 平成6年3月 札幌市 発行 )
  第三巻 通史三 第七編 近代都市札幌の形成
  第九章 さまざまな文化活動 第三節 出版文化と新聞 三 絵葉書に見る文化の世相

  には 「 明治・大正期の郵便局 (逓信省) 発行の絵葉書 」 一覧が掲載されています。
万国郵便連合加盟二十五年記念絵葉書      明35. 6.18  6枚1組 5銭
明治37年戦役記念絵葉書(第一回)         37. 9. 5  6枚1組12銭
     〃      (第二回)          37.12.25  3枚1組 6銭
     〃      (第三回)          38. 2.11  3枚1組のもの 5組 計15枚
     〃      (第四回)          38.10.15  5組15枚
     〃                    38.10.22
     〃                    38.12. 7
明治三十七八年戦役陸軍凱旋観兵式記念絵葉書 *1  39. 4.29  2種
明治37年戦役記念絵葉書(第五回) *2        39. 5. 6  3枚1組
米国艦隊歓迎記念絵葉書              41.10.17  2枚1組
日英博覧会記念絵葉書               43. 5.14  3枚1組
大礼記念絵葉書                 大 4.11.10  2枚1組10銭
平和記念絵葉書                   8. 7. 1  2枚1組
通信事業創始五十年記念絵葉書          10. 4.20  2枚1組

*1、*2 については click すると関連の新聞記事が別ウィンドウで開きます。
また、明治39年11月3日〜4日に札幌で開催された「第一回繪葉書展覧會」の関連記事は こちら からどうぞ。

また、ここで登場した初期の絵葉書については、次の書籍に詳しく書かれています。
『 日本繪葉書史潮 』 樋畑雪湖 著 日本郵券倶樂部 昭和11年4月15日 発行
または [ 日本の郵便文化選書 『 復刻版 日本絵葉書史潮 』 岩崎美術社 1983年9月16日 発行 ]
 このページで一番上の写真 ( " 函館みやげ " 及び " 小樽名所 " ) と 一番下の写真 ( 東北帝国大学農科大学 ) のものなどは、写真ではうまくお見せできませんが、その頃に市販された 「 絵葉書綴り 」 で、8 〜 10 枚程度の 「 絵葉書 」 がミシン目で一冊になっていて、一枚ずつ切って使うタイプのものです。 ( 「 函館みやげ 」 などは、第○集というようにその内容を変え、シリーズものとして売られたらしく、私の手元にも、この写真のものと文字や図柄が同じで表紙の色と綴られている絵葉書だけが違うものがあります)
ただ当時の流行では、「 絵葉書 」 を競って買ってもそれを使用することは少なく、未使用のままコレクションとして収集することも多かったようです。一時大流行した記念切手のコレクションに似ているようですね。

 また道内に限ってみても、ほとんどの市町村の風景が 「 絵葉書 」 として発行されていることを考えると、当時、一大ブームとなった 「 絵葉書 」 が地方の隅々にまで浸透していたことがわかります。
その後、1907 ( 明治 40 ) 年 4月には表面下部の三分の一以内に通信文の記載が認められます。( 下図 A )
これは、その 「 絵葉書 」、または 「 絵葉書 」 に写っている建物の年代を考察するひとつの手がかりとなります。
さらに 1918 ( 大正 7 ) 年 3月には、通信文の記載が三分の一から二分の一へとさらに拡大されました。 ( 下図 B )
また 1933 ( 昭和 8 ) 年 2月には官製葉書上部の 「 はかき 」 という表示が 「 はがき 」 と改められます。( 下図 C )
( ただし、下の写真のものは 逓信省発行 国会議事堂竣工記念 ( 昭和11 ) 絵葉書 のオモテ面です )
この頃より 「 絵葉書 」 の発行はだんだんと下火になっていきました。
A B C
 もともと歴史が好きでしたので、いつのまにか古写真に興味を持つようになりますが、少し気になっていることもあります。
 歴史関係の専門書や図集などには、今はない建築の美しい写真が掲載されています。しかしそのどれもがすました感じで、
 " 人間臭さ " というか、" 建築と人間の共生 " といったものがあまり感じられません。
 それは、その中に " 人 " が写りこんでいないからではないでしょうか。

 私が 「 絵葉書 」 と付き合いはじめたのはずいぶん前のことです。確か最初に購入したのは 「 東京名所 」 という二十数枚のセットではなかったかと記憶しています。建築の歴史を教えるようになった頃のことですので、もう 30年近く前のことだと思いますが、どこで、いくら位で買ったのかは残念ながら覚えてはいません。当時は北大近くの古書店 ( 南陽堂、弘南堂 ) などでも比較的簡単に手に入れることができましたが、その後、図書館・資料館など、収まるべきところに収まってしまったという感じで、最近はあまり見かけなくなったのが残念です。



 「 絵葉書 」 を収集しはじめてしばらくたつと、郷土資料などに掲載された写真を 「 絵葉書 」 で見てみたいという気持が募り、いつのまにか自分の中で探求リストのようなものができあがっているのに気づきます。私の場合は " 街並み " や " 建築 " にテーマを限っているため、そう簡単に見つかるはずもないのですが、古書店を訪れると、そこには目的のものを探している自分がいます。郷土資料などの掲載写真は 「 絵葉書 」 を複写しているものが多く、また印刷もあまりよくないために、建築の細部など現物でなければ読み取れない部分がでてきます。

 以前は東京の神田などで半日も費やし、文字通り足を棒にして探しまわったこともありましたが、ある程度集まってくると掘り出し物がなかなか見つからないのが当たり前で、逆に欲しいものが見つかったりすると、一日中上機嫌でいたりします。その後、札幌などでも一枚一枚袋に入れた売り方をする店が現れたりしましたが、やはり、「 絵葉書 」 の束が山のように入ったホコリまみれのダンボールから、一つずつ中を確認し、その日のふところ具合で買うかどうかを決断するという瞬間が " 究極 " のような気がします。

 ただ、残念なことに経済的な状況から最近はまったく絵葉書を買うことがなくなりました。
最後に買ったのは 10 年以上も前のことだと思いますが、そのため、この 「 絵葉書の世界 」 では現在手元にあるものに限って紹介していくこととなりますので、ご理解いただければ幸いです。 ( すべてを掲載する前に新しい仕事に変わっていればいいのですが ・・・・・ )



 工学と違って 「 歴史 」 はさまざまな柔軟性を隠し持っているような気がします。そして、それをうまく引き出してこそ、本当の 「 歴史 」 の面白さが見えてくるのではないかとも考えています。

 30年近く前に 「 東京名所 」 の 「 絵葉書 」 を購入した理由も、" 東京駅 " や " 国会議事堂 " など、建物のどれもが、
" イキイキとした姿で時代のほんの一瞬を切り取られ、その空気や時間が鮮度を保ったままで保存されている"
そんな写真にたいへん興味をひかれたからです。
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皆さんも是非 「 絵葉書の世界 」 を体験してください。 ( 感想などをメールでいただければ幸いです )
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